八木香保里さん 写真展「とごし と わたし」12/10(月)〜22(水)にフォトカノンで開催!

戸越にお住まいの写真家・八木香保里さんの写真展「とごし と わたし」が、戸越銀座商店街のフォトカノン戸越銀座店ギャラリーにて12月10日(金)から12月22日(水)の期間に開催されます。

八木 香保里( やぎ かほり )

1974年 京都府生まれ。京都橘女子大学大学院修了。東京都在住。

生活の場に出合う身近な景色や人物、動植物などを中心に撮影を行っている。主に自身の生活圏内で撮影することから、実際に暮らす品川区や実家のある京都市内を写した作品を主に制作している。KPA キョウトフォトアワード・アワード部門 優秀賞(鈴木崇選)、御苗場 vol.25 レビュアー賞(ジム・キャスパー選)、ZOOMS JAPAN Editors’ Photo Award ノミネート(2019および2021)など。ホームページ yagikahori.wixsite.com/photography

何気ない暮らしの風景の一瞬を切り取った八木さんの写真は、いずれもみずみずしく詩情豊かなものばかり。フィルムカメラで戸越を撮影された作品を展示する写真展「とごし と わたし」は、九年ぶりの開催です。

 

©八木香保里

 

今回は写真展の開催を記念して、八木さんのインタビューと特別寄稿文を掲載いたします。また、本記事内の写真はすべて八木さんの撮影されたものとなっております(写真の無断転載・使用はお控えください)。

インタビューは先だって、戸越銀座商店街にあるETUDE MONZ CAFEさんでおこないました。ちなみに八木さんのお気に入りはフラットホワイト。「コーヒーが好きで何杯も飲んでしまうので、カフェインを摂りすぎないように心がけています」とのことでした。

 

©八木香保里

 

「九年前、一度目の『とごし と わたし』を開催したころは戸越銀座商店街は撮影していなかったんです。私は戸越の南側に住んでいて、当時と今とで生活圏がすこし違っていたんですよね。以前は戸越公園中央商店街にあった写真屋さんにお世話になっていたし、買い物も自宅近くのお店で済ませていたので、北側の戸越銀座までわざわざ足を伸ばすことがありませんでした。

一度目の『とごし と わたし』では戸越公園駅のホーム延伸工事をきっかけに、変わっていく駅周辺の風景を写真にまとめようと考えました。当時のホームは二両分が短く、ホームの端から車両がはみだしていたんです。そこにちょうど踏切があって、それが戸越公園駅の印象的な風景になっていましたね。扉が開かない車両に乗っていた人が駅に着いたらあわてて移動するとか、よくある光景でした。気を抜くと忘れちゃうので私もよく車内を走りましたよ」

 

©八木香保里

 

「踏切が移設される直前の日にも写真を撮りに行きました。工事がはじまる前に踏切からの風景を撮りたくて、始発前に行きました。午後にもう一度撮りに行くと私と同じことを考えているカメラマンさんに出会い、ホームの延伸を惜しんだことを思い出します。

駅の電光掲示板を撮ったものもありますね。時間がぼやけてよく見えないけど、朝の四時台だったと思います。まだ暗い中でした。本格的に秋が来る前の時期だったんじゃないかな、たしか。その時期の写真を見てみると、人の服装が半袖だったりします。踏切のある風景は夏から秋にかけて撮影して作品集で扱いました」

 

©八木香保里

 

「一度目の展示から九年が経って撮影する環境も随分変わりました。お世話になっていた写真屋さんもなくなりました。今ではずっとフォトカノンさんにお世話になっていますし、瀬尾商店さんムロマメ舎さんもくもくいしさんなど、戸越銀座でも通うお店が増えました。

フォトカノンさんは、フィルムの販売から現像、データ作成、プリントまでお願いできます。全国から郵送でも受け付けていて、遠くから足を運ばれる方も多いですね。フォトカノンさんにお願いすれば間違いなく仕上がるとわかっているので、いつも安心してお願いしています。併設されているギャラリーで年に一度写真展を開いてます。

ただ、いつも撮影で使っているフィルムの生産終了が決まったので、今後どうなるだろう……というのは気がかりなところです。他にもフィルムをつくっている会社はありますが、メーカーが違うと発色なども変わってしまうので今はそれを心配しています。

そんな時もフォトカノンさんがいてくださるというのは心強いです。色や明暗など自分が望む調整をお願いできる安心感は、なにものにも代えがたいです。もしカノンさんが戸越銀座になかったら、自分の作品づくりのスタイルはずいぶんと変わっていたと思います。完全にデジタルへ移行していたかもしれません」

 

©八木香保里

 

「2018年の10月、フォトカノンさんの十周年の企画展『10周年の10月10日展』が開催されました。たくさんのお客さまが来店され、お祝いのパーティーも中国料理の百番さんで開かれました。50人近くの方が参加されたんじゃないかな。写真をはじめて間もない若い世代の方もいれば、店舗のリニューアル前からお店を利用されている方も来てくださいました。皆さん、カノンさんを好きで集まってくれる人たちばかり。コロナ禍になった今では、本当に懐かしい光景です。

二度目の『とごし と わたし』は、こうした状況の変化がきっかけで生まれたといってもいいのかもしれません。昨年の春は、どこもがらんとしていましたよね。桜の時季、買い物の行き帰りに戸越公園を通っても、ワイワイとお花見をしている人たちなんていない。私も買い物の途中にぱっと写真を撮って、撮り終えたらすぐにカメラを鞄にしまって帰ってました。あの頃は楽しんじゃいけないというような空気に包まれていて閉塞感を感じていました」

 

©八木香保里

 

「一度目の『とごし と わたし』から時間が経って街の風景も変わり、以前どんなだったかをすぐに思い出せなくなっている自分に気づいたり、フィルムの生産が縮小されていく報せを受け取ったり、コロナ禍の影響を受ける戸越の街に目の当たりにしたり……そういう機会の積み重ねに『とごしとわたし、今やらなきゃ!』と思いました。この先がどうなるかなんてわからないし、後になってやっておけばよかったって悔やみたくない。十年の節目がどうとかこだわる必要もないし。

二度目の『とごし と わたし』は、いろんなものを削いでいって、その先に残ったのがこれだったんだ……と再発見したような気持ちです。昨年がターニングポイントになって、本当に自分にとって大事なものを見つけていった人も多かったと思うんですが、撮影してきた写真を見て自分にとっては『これが残ったんだ』というような驚きに近い気持ちもあります。

写真を通して自分を省みるなかで、一度目の展示から九年の間の私自身の変化も感じていますね。九年前にはなかった人とのつながりが出来たことも作品に影響を与えています。『とごし と わたし』は、自分と地域との関わりそのものです。ぜひ、戸越銀座の方々にも気軽に足を運んでいただき『こんな戸越もあるんだ』という発見も楽しんでもらいたいです」

以下、八木さんの寄稿文です。

 

©八木香保里

 

戸越で生活をスタートしたのは24歳のとき。知らない街を知るために地図を買い、写真を撮りはじめました。初めは目印になるようなものを撮り、次第に珍しいものや気になるものにレンズを向けるように。その後友人より中判のフィルムカメラを譲り受け、撮影の練習場所に選んだのも戸越でした。私にとって写真は生活圏と切り離せない関係になっていきました。

写真展のタイトルである「とごし と わたし」は「戸越と私」、この作品は暮らす街と自分との関わりを写真を通して顧みる試みです。九年前も今も変わらず撮り続けている場所もあれば、撮影に新しく加わった場所もあるし、撮らなくなっていった場所もあります。「戸越といえば」と言われて浮かぶイメージとは無縁の場所も数多くあります。

写真展では「こんな戸越もあるんだね」と楽しんでもらえたら嬉しいです。フォトカノンさんのギャラリーで皆様のお越しを心よりお待ち申し上げます(八木香保里)。

 

©八木香保里

 

八木香保里さん 写真展「とごし と わたし」は、戸越銀座商店街のフォトカノン戸越銀座店さんで、12月10日(金)から12月22日(水)開催(10時から20時、木曜休)。ぜひ、お気軽に足をお運びください。